昔、私が勤めていた会社に柔道のかなり強い先輩がいて、その先輩は若い頃から柔道以外にも様々なスポーツをやってきたらしいが、その先輩いわく「いろんなスポーツの中で『相撲』が一番むずかしい」とのこと。
『相撲』は立会いの一瞬で勝負の7〜8割は決まってしまうので、途中で立会いのミスを取り戻そうと思ってもなかなか出来ないというのがその理由であった。
丸い土俵の中で裸で投げあうという非常に原始的で単純なスポーツに見える『相撲』も、経験したものにしか分らない“むずかしさ=奥の深さ”があるものだと感心して聞き入ったのを覚えている。
ところで大相撲初場所は朝青龍が帰ってきて、久しぶりの大入り満員と上々の視聴率で、協会もさぞかしホッと胸をなでおろしていることであろうが、私は最近の取り組みを見ていてどうしても気になることが一つある。
それは、両横綱の立会いの『張り差し』の多さである。
この7日間、二人ともほとんど『張り差し』で立っている。
『張り差し』とは、立会いでまず相手の顔を張って、ひるんだ隙に自分の得意な体勢に組む(差す)、四つ相撲の得意な力士が出足の鋭い押し相撲の力士によく使う戦法である。
この『張り差し』自体は別に違反でもないし、両横綱が多用しているところを見るとかなり有効な戦術であることは確かである。
それは、かつて先輩から聞いた「立会いの一瞬で勝負の7〜8割は決まってしまう」という相撲の本質からしても非常に理にかなった戦法だと思う。
私が気になるのは、この“相手の顔を張る“という行為が、横綱にしか許されない”特権的な行為“に見えることである。
私はいまだかって、下位の力士が横綱の“顔を張った”ことを見たことがない。
もちろん取り組みの流れの中で、突っ張りあいの手が偶然横綱の顔に当たったということはあっても、立会いでいきなり横綱の顔を張ったということは見たことがない。
どの力士も立会いの重要性は十分分かっているであろうし、『張り差し』の有効性も十分知っているであろうに横綱に対しては使わないのである。
いや、使えないのである。
下位の力士にとって横綱の“顔を張る”という行為は戦術以前に、最高位の者に対する失礼な行為としてためらわせているのである。
だとすると、この『張り差し』という非常に有効な手段は、横綱にしか許されない”特権的な行為“だとみなされても仕方ないことになる。
勝負は常に対等の5分の状態でするのが常識であり、一方にしか使えない手があるとするならば、それはもはや公平な試合とはみなされない。
立会いの重要性を考慮するならば、取り組みの前からすでに6−4、ないしは7−3のハンディ戦のようなものである。
人間、いくら事前に相手が『張り差し』でくるというのが分かっていても、目の前に大きな手が飛んできたら、反射的に顔を背けてひるんでしまうのは仕方ないことであり、訓練で克服できる類のものでもない。
だとするとこの際、試合の公平性の観点からも、また横綱の真の強さを知らしめるためにも、両横綱には『張り差し』を禁止または自主的に封印してもらって、堂々と胸を貸して5分の立ち会いをさせるべきだと思うがどうであろう?
何でも勝てばいいという相撲は、今流行の“品格の時代“にはそぐわないし、そうすれば意外と朝青龍ファンがふえるかも・・・。
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質の良い書き込みに↑のようなコメントがついているのは全く残念です。
『張り差し』についての問題提起よく理解できました。
ヤフーのニュースで貴乃花親方が問題と考えているようだ、との記事からリンクでこちらにたどり着きました(2008-3-11)
何事も勝負は序盤のよしあしで決まってしまうところがありますね。それが取り組みの体勢で、上手が取れる、まわしに手が届くか、という相撲ならではなおさらです。
大事な場面で顔を張られることによって序盤の体勢を有利にされてしまう。それが横綱ばかりに許されてしまうのであれば、初めからハンディをしょってることになる・・・そんなのではつまんないですね。
勝敗のつき方に『美』をもとめる日本人の感覚からすると、「勝てばいいんだろ」的な相撲をする今の外国人横綱に苦言のひとつも言いたくなってしまいます。
今後も、良質なご意見を拝見したいと思います。
(〃⌒ー⌒)ノ
相撲は神事であり国技であると同時に、力士同士の真剣勝負・命の取り合いでもあります。武士の果し合いと同じ。
そして、立会いは武士が刀を抜いて正に切りかからんとするところでしょう。この時に、相手に上段からいこうと中段から払おうと、一直線に突きにかかろうと、全く問題にはならないはず。
そもそも、真剣勝負に自粛とかを求める方がいかがなものかと思いますね。本当の強さとか品格を相撲界・横綱に求めるのなら、変な制限を取り払った中で求めるべきです。